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としまアートステーションYシンポジウムレポート

 

地方で開くアートスペース 遊戯室 の事例:中崎透さん

石幡:ありがとうございます。続いて、中崎さんから。

中崎:水戸の遊戯室について少しご説明させていただきます。僕はもともと武蔵野美術大学の博士課程在籍中、大学内の制作スペースで2005年1月から「中崎透遊戯室」という名前で学内のオルタナティブなギャラリーをはじめていました。それから2007年の頭くらいまで大学在籍中に20本くらいの展覧会を企画していました。そのときのモチベーションは、その当時は銀座の貸しギャラリーなどを借りて発表する習慣がまだ一般的だった時期でした。僕らもバイトして貯めたお金で1週間とか2週間とか、ただ場所で展示するためだけに借りましたが、「逆に自分で場所を持ってしまえばいいじゃん」と考えるようになりました。

学費はもちろん払っていたけど、基本的には場所代がかからないので、20万円払って1週間借りるよりも、展覧会ごとにDM制作費として1万円だけ渡す仕組みだったのですが、2年間で20万円、最終的にお得だったかなと。作家の個展だけど中崎の名前の場所だから半分は自分の名前で発表しているような感じになっていました。

もちろん、自分が発表したかったのもあったけど、それよりも当時の周囲の同世代は、すごくおもしろいけどあまり発表する機会がなかったり、ちょうど出したいタイミングがあったりする人たちがいて、そんな人たちに声をかけながら展示をしていました。いざやってみたら、たまり場というか自分のお客さん以外の作家のお客さんが自分の場所にやってきて、思ってもみなかったネットワークができたり、自分が興味をもっていたり、尊敬している作家と、出来上がった作品をみるだけじゃなく一緒につくるプロセスを共有したり一緒に店番をしたりしながら、だらだら話したり飲み行ったりしたことで作家同士のコミュニケーションがすごくできて、そうした場の運営や展覧会をつくることに興味が出てきたんです。

そして、2007年秋に自分の出身地の茨城県水戸市に拠点を移しました。実家に拠点を移して、制作スペースを探そうかなと思ったときに、そこにアーティストの有馬かおるさんがいたんです。有馬さんは愛知県の犬山市にオルタナティブスペースの「キワマリ荘」を90年代から10年間くらい運営していました。ちょうどぼくが(水戸に)戻る時期に水戸芸術館の「マイクロポップの時代」という展覧会に参加したのをきっかけに、水戸に移住してきたんです。その理由もよくある話で、大家さんや地主さんと仲良くなって、「おもしろそうなスペースやるならうちの場所安く貸してあげるよ」みたいな感じで水戸でシェアスペースの「キワマリ荘」を始めたんです。

キワマリ荘は、水戸駅と水戸芸術館のちょうど中間地点にあって、籠ったスタジオにするよりもギャラリー形式のオープンスペースにした方が機能するかなと思い、一室を借りることにしました。借りたての頃は入居者が僕らしかいなかったので、2ヶ月くらい好きに使っていいよってことで、最初は建物全体を使った展覧会をしました。ちょうどそのときに小川くんがOngoingのリノベーションの様子をブログに投稿しているのを見ていて、多分1ヶ月くらい早い2007年の12月15日の僕の誕生日にオープンして、先日7年目を迎えました。

うちは、山田荘同様に玄関入って2歩でコタツがあるアートスペースをコンセプトにやっています。8畳のスペースと手前の4畳半を事務所で使っています。今は遊戯室以外に、3畳のAFAというアートスペースを、もともと大学生で今は水戸芸術館のスタッフをしている子がやっています。お風呂もキッチンもある普通の一軒家なので、レジデンスとまではいかないけど1週間くらい現地制作する作家がいても対応できます。

以前に水戸芸術館でジュリアン・オピーさんが展覧会をして、パーティーのあとにジュリアン・オピーさんが同時期に遊戯室で展覧会をしていた若手作家に講評してくれたり、のんびりコタツで一杯やったりみたいなこともありました。有馬さん自身は2009年に結婚を機に千葉の方へ引っ越しました。それまでは管理人の有馬さんにみんなが借りる形でしたが、有馬さんが抜けたことでフラットなシェアスペースになっています。今は遊戯室とAFAのギャラリー、デザイナーの事務所とカメラマンの方が暗室として借りていて、サウンド系アーティストが物置兼スタジオとたまにギャラリーとして使い、あとはアートマネジメントしている子が場所は借りていないけどそこでイベントを時折やるから家賃を少し払っている、という感じで運営しています。

それまでは年に2、3本くらい展覧会をやってましたが、僕自身が水戸にいないこともあるので週末に店番するのが難しくなりました。それまでは大学生がいたので一緒に店番を気軽に頼めたけど、その子も社会人になって他の仕事をしながら借りるようになったので、展覧会方式の企画は去年はほとんどできていないです。けれども、遊戯室というひとつのコンテンツではなく、キワマリ荘を借りている6組のグループみんなでイベントをつくるのがここ数年でおもしろくなってきていて、1日限りのシンポジウムをやったり、突然「フェスやりたい!」ってなって総予算10万円くらいでゲストを呼んだ音楽フェスや演劇をやったりしながら、一軒家をどんどん使い倒してます。

東京との違いを言うと、やっぱり地方は家賃が安い! 家賃が安く、みんなで分担するとお小遣い程度で場所を借りられるので、そこで商売をしないでも成立する。来るお客さんも、美術に興味の無い人たちが入りやすいフレームをつくっていくのを以前より意識しています。

 

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