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としまアートステーションYシンポジウムレポート

 

スペースと地域との関係

石幡:ありがとうございます。やっぱり事業としてペイする仕組みをつくる方法もあるし、ネットワークでいろんな人がここはなきゃということで労力を提供してくれることもある。入居する人たちでシェアしたりと、いろんな運営の仕方があるんですね。

実際にその場でやってみて、地域に対する影響やみなさんが考えていらっしゃるスペースの周囲に対する影響はありましたか? 変わったことやこんな効果があったとか。

宮崎:今はまだ2年目なのでいろいろ試行錯誤の途中で、これまでHAGISOの中ではいろんなことをやっていましたが、これからは外に開いていこうと思っています。例えば「サマーキャンプ」。谷中は魅力的なまちなんですけど、そこの価値を掘り起こしてさらに再認識するというのがHAGISOの大事な役割だと思っています。

実際、谷中は魅力的なものがあるのにそれがどんどんなくなっているんです。HAGISOをやる2年前に、HAGISOの2軒隣に「初音湯」という銭湯があって、めちゃくちゃいい銭湯で僕らもよく通ってました。それが、自分が出張から帰ってきたらなくなって普通の分譲住宅になっていたんです。もちろん、そういう選択肢も今の時代はしょうがないけど、だけど僕らからすると木造アパートでさえリノベーションすれば変わるんだから、銭湯がリノベーションしたらもっと魅力的な場所になるのは間違いない。そういうポテンシャルがあることをオーナーが気づかなかったり、そういう選択肢があることが想像できないばかりに、不動産の人に言われるがままどんどん話が進んでいっちゃう。

2軒隣に住んでいるのに何もできなかった口惜しさがHAGISOのモチベーションにもなっています。最近もそうした魅力的な建物がなくなっていて、このままだと谷中はつまらない場所になっちゃうなと思っていて。

そうしたことを地域で問題視してる人も多い。課題をきちんと顕在化させるのは大事だと思ったので、HAGISOのギャラリーで1週間学生ワークショップをやったんです。例えば谷中にあったノコギリ屋根工場を題材に、そこがどうやったらもっと魅力的になるかを考える。しかも、カフェ営業中に授業みたいにホワイトボードでやりとりしてる。カフェの隣で一生懸命学生たちが模型をつくったりして、最後にプレゼンする様子を、まったく関係ないカフェ目当てに来た人たちの横でやっているから、みんなが見はじめる。現場で課題に思ってることを会議室や閉じたとこでやってもインパクトはないので、人目に触れるところでやるべきだと思っています。他にも、もっと周辺のエリアに対して働きかけることもやりたいなと思っています。

石幡:ありがとうございます。小川さんはいかがでしょう。

小川:さきほども言いましたけど、吉祥寺は住みたいまちNo.1に選ばれるようなところで、ほっといても人がどんどん来るんですよ。地元のお店の多くは3代目くらいになっているんですけど、もはや自分の祖父や父親がつくった昔ながらのお店を継ぐ必要もなく、テナント貸しすればお金は稼げると聞きます。井の頭公園があるから少しは違うかもしれないけど、吉祥寺の駅前なんてどこにでもあるようなチェーン店だらけ。吉祥寺ならではのお店は、ここ数年でどんどん減っている印象を受けます。

テナント貸しならば、今あるものが潰れてもすぐに新しいお店が入るからなかなか危機意識も持ちづらい。けれども、このままだと吉祥寺はあと10年後には住みたいまちとしての魅力を失うと思ってる地元の人たちも一方ではいて。そういう人たちが僕のところに来て「なんとか吉祥寺を昔みたいにオリジナリティのあるまちにできないか」と相談されるようになってきました。

僕のところはアンダーグラウンドな場所だと思うんですけど、吉祥寺がどんどんつまらなくなってきている中でここだけはちょっと頭のおかしいやつがやっていて、週末になるとおかしな若者たちが大量に集まる場所だってことがちょっとずつ周囲の人たちに知られてきてる。最近は、まちづくり会議みたいなものに呼ばれて話をしてくれとか言われるようになってきました。

今日、豊島区を昼間にちょっとだけ歩いたけど、ここの地域はまだお隣との距離が近い感じがしますね。吉祥寺はマンションだらけで、一軒家でも隣に住んでいる人との交流はほぼないんです。そういう意味で、地域の再生は僕のまちよりかは希望があるのかなと思います。

逆に吉祥寺のような都市部の方はどうやって金が儲かるかとか、この土地をどう転がすかとかそんなことしか考えてないし、アートイベントをやるとしても、どれだけここに人が来るのか、ということばかり聞かれる。そういう人たちを相手にするのはけっこう大変で、僕は都市部でアートをやるほうが難しいと思っています。

 

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